インフォメーション・マートのテーブルをオブジェクト・ストレージで実装する(2)
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前回の投稿「インフォメーション・マートのテーブルをオブジェクト・ストレージで実装する(1)」では、インフォメーション・マートのテーブルをオブジェクト・ストレージで実装する方法とそのメリットについて紹介しました。今回は、Google BigQueryを使用してテーブルにクエリを発行し、実行計画の違い、単体性能及び並列実行時の性能の差異を実際に検証します。
検証概要(振り返り)
検証モデル
検証に使用するデータモデルは、次の通りです。

検証パターンとデータの概要
ファクトテーブルの実装パターン
本検証は、上記のデータモデルのファクトテーブル(オレンジ色のテーブル)の実装をネイティブテーブルやオブジェクト・ストレージを利用した外部テーブルするなどのパターンで性能を検証します。パターンは次の5つです。(前回の投稿から1パターン追加されています。)
パターン | タイプ | 分割方式 | 分割数 |
---|---|---|---|
ネイティブ | ネイティブ | なし | |
ネイティブ+パーティション | ネイティブ | パーティション | 6パーティション |
CSV(圧縮なし) | 外部テーブル | ファイル(月+任意) | 1200ファイル |
CSV(圧縮あり) | 外部テーブル | ファイル(月+任意) | 1200ファイル |
Parquet(列指向データファイル) | 外部テーブル | ファイル(月+任意) | 1200ファイル |
並列度
並列度が性能に与える影響を検証するため、下記4パターンを実施しました。
- 単体実行
- 4並列実行
- 8並列実行
- 16並列実行
検証方法
検証方法(概要)
検証用SQL
検証で実行するSQLは次の通り。すべてのマスタを紐づけ全件を集計し、客数、売上数量合計、売上金額合計を求めるという内容です。
SQL実行環境
SQLを実行する環境の概要は次の通りです。
環境 | Google Cloud Platform Cloud Shell |
---|---|
OS | Ubuntu 22.04.4 |
プログラム言語 | Python 3.12.3 |
ライブラリ | google-cloud-bigquery future |
処理概要 | 配列に定義された複数のSQL文に対し、個別にスレッドを生成し同時実行を行う。 SQLは、データベースのキャッシュを使用しない(use_query_cache=False)のAPI設定の上で実行する。 |
検証用プログラムサンプル
検証結果
実行計画
ファクトテーブルの実装パターン別の実行計画は次の通りです。
- ネイティブ

- ネイティブ+パーティション

- CSV(圧縮なし)

- CSV(圧縮あり)

- Parquet(列指向データファイル)

性能検証の結果
また、性能検証の結果は次の通りです。

この結果から、このケースでは次の通りの結果が読み取れます。
- 単体実行の性能は、次の通り。 Parquet > ネイティブ+パーティション > ネイティブ > CSV圧縮 > CSV非圧縮
- 並列実行の性能は、次の通り。 ネイティブ+パーティション > Parquet > ネイティブ > CSV圧縮 > CSV非圧縮
- 並列実行により、いずれのパターンも性能の劣化が認められるが、級数的な劣化は見受けられない。
- ネイティブ+パーティションのパターンは並列実行による性能の劣化が極めて少ない。
また、上述の実行計画のデータを詳細にみると、いずれのパターンも中心の「Join+」のフェーズにスロット時間(BigQueryの計算リソースの単位)の95%以上が消費されていることがわかります。

パターン別消費スロット時間(単位:分)
パターン | 全体 | Join+フェーズ |
---|---|---|
ネイティブ | 42 | 41 |
ネイティブ+パーティション | 30 | 30 |
CSV(圧縮なし) | 109 | 108 |
CSV(圧縮あり) | 105 | 104 |
Parquet(列指向データファイル) | 33 | 33 |
「ネイティブ+パーティション」以外のすべての実装パターンが同一の実行計画であることを考えると、性能の差異はデータの格納パターンの差異に大きく依存しているものと推察できます。
まとめ
今回は、特定のケースを想定し、インフォメーション・マートのテーブルをオブジェクト・ストレージで実装する方法とその性能を検証しました。実際には、次のような判定基準を用いて、各案件の要件に合った実装方式を選択することが推奨されます。
- データサイズ
- クエリパフォーマンス
- データ更新頻度
- 初期導入コスト
- クエリコスト
- ストレージコスト
- データの形式(構造化/半構造化)
- スキーマの変更頻度
- アクセス頻度
- 運用管理の容易さ